ダイアモンド ゼンハイザージャパン株式会社 | Artists meet SENNHEISER
Sennheiser

ARTISTS MEET SENNHEISER

2016/03/10
Artists meet SENNHEISER
自身の歌声の良さを最大限に発揮させてくれるのが
ノイマン、ゼンハイザーのマイクだった
S シャケさんとは今も会ったりするんですか?
D この間、会ったね。一夜限りの再結成ライヴで。彼は仙人みたいになっていて、すごいミュージシャンになったと思うよ。昔の下手くそなところが俺は好きだったけどね。でも優れたミュージシャンだね。隙がない。ギターも上手いし。今は環境音楽みたいなのをやっていて。ピンクフロイドみたいなのもやっているけど。
S へぇ、難しい音楽をやっているんですね。ユカイさんは音へのこだわりはありますか?
D 音はね、実際はこだわりないんだろうね。元々はカセットテープレコーダーのオンボロの、しかもモノラルの音を聴いて育ってきているから。きっと音って、いい音、悪い音があると思うよ。でも好き嫌いだよね。この音が好きか嫌いか、というところに辿りつく。ウーハーとかで聴いていてさ、これいい音なんだよ、と言われても嫌いな人には分からないわけで。
S そこはメーカーの作り手側も同じところがありまして。日本人は低音のドンシャリ好きと言われますけど、ゼンハイザーはそれは嫌なんですね。やっぱりちゃんとナチュラルに音を出したい、というのがあって。
D 俺もドンシャリは嫌いだよ。好きな音って、自分でうまく言えないけど、バランスのいい豊かな音が好きかもしれないね。
S ゼンハイザーはそういった音を目指しています。ヘッドフォンやイヤホンなどいろいろ作っていますが、特にマイクがプロのミュージシャンの方々に支持されていて、ハイエンド系のものが好まれていて。高価格、高音質のものが評価されていて。2000円~3000円の商品があまりなくて、後ろにシャークフィンと言われるワイヤレスの5200というタイプだと、80万円くらいするので。
D マイクはね、歴史があるんだね。じゃあノイマンは子会社なんだね。
S ベルリンで作っているんですけど、ゼンハイザーはハノーバーというドイツの町にありまして。
D 実はものすごくお世話になっているんだよ。デビューした時に、はじめて自分の弱点を知って。それはレコーディングをして初めて分かったんだけど、決定的な。ロックだったからよかったんだろうし、80年代初頭だったし。型にハメようとする人たちがまわりにいなかったというのが功を奏したんだけど、いざレコーディングをしてみたら、子音が強いんだよ。いろいろなマイクを試して、子音を抜いてみたんだ。子音を通らないマイクを選んで録音をすると、俺の歌のいい成分がみんな消えちゃう。それでいろいろなマイクを試してみて、見つけたのがノイマンだった。オールドタイプのノイマン。今はマイクの質がよくなっているから、他のマイクでもあまり気にならなくなってきているんだけど、80年代初頭はなかなかなくて。はじめて自分のレコーディングにちゃんとしたエンジニアが付いたんだけど、マイケルというドイツ人だったんだよね。レコーディングはノイマンのマイクしかダメだった。子音が気にならないことを拾って、なおかつ自分の成分、声のいい成分を残すものって、ノイマンのマイクしかなかった。だけどライヴが困っちゃうんだよね。
S ライヴ用もなくはないんですけど、ノイマンはちょっと違いますものね。
D ホールくらいの規模だと気にならないんだけど、ライヴハウスだとものすごく気になっちゃうんだよね。その子音というのが。ただ俺のまわりの人たち、一緒にバンドをやっていた連中とかディレクターの人たちは、その子音がいいんだと言ってくれたけど。結局、海外の発音って、みんな強烈に子音が出ているから、あまり気にならないけどねって。でも俺は気になっていて。そういえばクジラマイクって知ってる?
S もちろん知っています。421ですよね。
D そう。当時、ライヴハウスで歌うときは、クジラマイクを使っていたんだよ。
S そうだったんですね。
D それがゼンハイザーだったんだよ。ゼンハイザーしかなかった。
S 面白いことに、オールドノイマンもそうだし、クジラマイクも今でも使いたいという方がいらっしゃって。クジラマイクは今でも人気なんですよ。
D マイクの質も変わってきたからね。研究された、というのもあるしね。クジラマイクを持って歌ってたよ。でも逆に誰もやっていなかったので、最初は珍しがられていたけどね。ただ子音が気になっていたから、というだけだったんだけど。だからゼンハイザーには本当にお世話になったんだよ。ただ子音だけは自分の中で気をつけるようにしないといい歌が歌えないんだよね。力が抜けたりして。でもソロになって、フランスに行ってレコーディングしたときに、LAで仕事をやっていた日本人のエンジニアなんだけど、ピンクフロイドとか録っていた人で。そこでいろいろ調べたんだけど、フランス人は元々の発音が子音で成り立っているのね。あの子音を表現するのに、一番のマイクがオールドタイプのものだった。新しいやつだとダメだったんだよね。クラシックのものよりも保管してあったオールドのマイクを使って。結局、そのエンジニアが買ったんだよね。それじゃないと俺の歌のいい部分が出せないからって。
S こだわるとマイク一つとってもこれじゃなければ、となりますよね。
D それ以来、レコーディングのたびにエンジニアが借りたりしていた。俺は成り下がりの時代もあったけど、マイクだけは提示して使っていたんだよね。
S ノイマンもゼンハイザーもドイツのメーカーなんですけど、フランスでのシェアがすごく高いんですよ。
D 子音の問題なんじゃない。
S そうだったんですね。すごく腑に落ちました。
D 追及していくと、ここにたどり着くんだよね。今は大分変ってきたけど、昔は母音がはっきりしていないと、それは歌として気持ち悪い、という人が多かったから。俺は母音とかに気をつけて歌っているつもりなんだけど、どうしてもね、骨格なんだろうね、子音が強烈なのよ。それがきっといいところでもあり、悪いところでもある。それを消さない唯一のマイクがノイマンだったんだよ。
S ユカイさんはノイマンのマイクを以前から使っていて、それを僕は学生の頃から聴いていたんですね。
D そうなんだね。ヘッドフォンやイヤホンもゼンハイザーのものを使っていたことがあったよ。今はイヤホンの時代じゃん?本当の人はヘッドフォンを持ち歩くけどね。でも今はイヤホンを持ち歩く時代になっていて。いろいろなイヤホンを試したんだけど、もちろん高い値段を出せばいいのがあるけど、手頃な値段でゼンハイザーが一番いいイヤホンを出していたんだよね。一時期使っていたよ。今はなかなかスタジオで聴けない時代になってきちゃって、自分のスタジオを作らないといい音で聴けない。そんな時のお友達がイヤホンで。前は持ち歩いたりしていたから、付き合いが長いんだよ、ゼンハイザーとは。ライヴでも自分のマイクがあったらいいなと思うよね。でもワイヤレスだとなかなかいいのが分からなくて。
S ゼンハイザーはワイヤレスが普及した、その先に立っていたようなメーカーで。元々、無線の測定器とかから始まっているんですよ、会社が。ワイヤレス技術から始まって、マイク、ヘッドフォンにいって、という形なので。
D 今はイヤーモニターの時代だからね。イヤーモニターも作っているの?
S やっています。
D イヤーモニターはラウドネスのボーカルの二井原実さんが言っていたけど、ものすごい種類があって、ピンキリなんだってね。イヤーモニターがあると、確かに大きいステージでやったときは音が取りやすい。最近のバンドは音が小さいんだよね。なぜかというとイヤーモニターを使うから。そんなに大きくする必要がないというか。あんまりこだわりがないのかもね。ギターやベースって、音圧で気持ちよくなるんだけど、そういう感覚じゃないよね、今の子たちは。もっとストイックなのかもね。時代と共に変わっているよね。ただ不良のミュージシャンはみんな死んじゃっているからね。それが答えだったりして。でも両方いないとつまらない、というのは確かにある。
S ユカイさんも最初の頃はやってやるぜ、負けないぜ、みたいに尖がっていたじゃないですか。今は活動の幅を広げているのもあって、結構優しい部分が多いなと思うんです。そこらへんの変化は、自分でも感じていますか?
D そうだね。結局は子供を授かって変わった、というのが大きいと思うね。男の不妊治療で苦労して。それまでは自分勝手に生きてきたんだけど、お恥ずかしい話ね、47歳にして子供を授かって、はじめて人様のことが少し分かったのかな。
S でも根幹は変わらない気がしていて。
D まあ、それはね。
S 常にポジティブで、前に進んでいるのを歌からも感じますし、書かれているものからも感じますし。トーン&マナーは変わっているのかもしれないですけど、ユカイさんを見ていて、こんな人生もいいなと感じるんです。
D 昔と今と決定的に違うところは、昔はいつ死んでもいいなと思っていたんだよね。自分勝手に生きているわけだからさ。自分本位というか、自分だけで生きてきている、というか。だから成り下がろうが何しようが好きなことをできればいいや、という。そんな風な自分だったんだけど、子供を授かって、死ねないなって。こいつらのためにも長生きしなければいけないな、と思って。俺は成り下がりになったり、いろいろな人生の分岐点にぶち当たって分かったんだけど、人間って一人じゃ生きていけないんだなって。子供を授かったことによって、自分を見つめ直すようになったのかな。そこがきっと決定的な違いかもしれない。