Sennheiser

ARTISTS MEET SENNHEISER

2017/6/21
Artists meet SENNHEISER
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三田村 優 さん
- 録音技師 -
Q:三田村さん、よろしくお願いします。
A:よろしくお願いします。
Q:最初に、現在のお仕事について伺ってもよろしいでしょうか。
A:主にコマーシャルを中心とした撮影場所で録音を行う同録、そしてそれを整音してミックスするMA(マルチオーディオ)ミキサーを務めております。
Q:差し支えなければ、最近のお仕事を具体的に教えて頂けますか。
A:『日清焼そばUFO』や『資生堂プリオール』、『大正製薬パブロンSゴールドW』等のCMで、録音・MA・効果音を担当させていただいてまいす。
Q:三田村さんのキャリアについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
A:1995年に株式会社サウンド・シティに入社しました。MA課に所属しましたが、当然先ずはアシスタントのアシスタントから始まり、アシスタントへと。私は相当出来が悪かったので、先輩方には苦労をお掛けしたと思います。そこではMA作業に加え、撮影現場での録音業務もあり、ミーハーな私にとっては撮影現場に行けることはとても嬉しかったですね(笑)。
Q:なるほど
A:その後、サウンド・シティの先輩ですでに退職されていた大場さんから、PPC(現:TYOテクニカルランチ、CM業界ではオフラインでAvidを導入した国内初の会社)でMAルームを作るという話を聞きまして。「一からつくるのも面白いからおいでよ」と誘っていただき、98年3月にPPCに入社しました。その2年後にミキサーデビューしました。TYOテクニカルランチは2014年7月まで16年勤め、そこからフリーランスになりました。
Q:ずっと音の仕事をされているのですね。
A:そうですね。22年になりますね。
Q:ゼンハイザーとの接点は、どのようなものだったのでしょうか。
A:先程もお話しましたようにサウンド・シティ入社後から、録音部作業がありましたから、ガンマイクではMKH 415やMKH 815があたりまえのように数多くありました。
当然小僧ですので、ブームマンとしてですが、下手で下手で(笑)。ある撮影で、815をドン伸ばししていてミキサーの方をチラッと見たら首かしげていたんですね。そしたらマイクを見て、パッと表情が変わり、そこで自分も『アッ!』って気がつきました。マイクが逆向きだったんですね。高い脚立に乗っかり、ジャマーに毛皮を付けて振っていたので、『よーい!』と突然本番が始まり、慌てて出した時に、どちらがマイクの頭か考えずに出したので逆に出していたんですね。戻ったら『お前責任取れるのか!』って、先輩ミキサーに怒られたりしたこともありました(笑)。
その後、PPCでミキサーとしてデビューして、自分で音を収録、MAで仕上げるようになってから、ゼンハイザー製ガンマイクの「ピンポイントで収録できる」素晴らしさをとても実感しました。ヘッドフォンに関しては、サウンド・シティ時代のミキサー方の中でも、ゼンハイザーと他のものを使う方に分かれていましたが、私はPPCの大場さんの影響でゼンハイザーのHD 25でしたね。
Q:HD 25はよく使われていますからね。
A:そうですね。フリーランスになって、真っ先に買った機材の一つです。HD 25は、現場で聴いてると、ベースノイズ等も素直に全て聴こえてきてしまうので、判断がとてもシビアになってしまうんです。例えば、ヘッドフォンを外すとあまり聴こえない遠くに飛んでいる飛行機の音もすごく聴こえて。ガンマイクの向きもあるでしょうが。だから、録音部待ちが許される時は待ってもらいます。そうすることで、収録後にMAスタジオで聴くと、その分メインの音が綺麗に収録されているんですよね。他のヘッドフォンだと、収録中はメインの音声がよく聴こえるんですが、収録から戻ってきてスタジオで聴くと、『こんなにノイズがあったっけ?』と思えるくらいとても聴こえてきて、後処理が大変なんです。慣れもあるのかもしれませんけどね。今ではノイズリダクションのプラグインがとても発達しているので、『このくらいは後処理で消せる』という判断ができていますが、それは、現場でのHD 25でモニターしているからこそできると確信しています。
Q:今回、AVXを選んでいただきました。ご購入いただいた理由について教えていただけますか?
A:PPCにいたころも800MHzのB帯アナログワイヤレスは欠かせませんでしたが、3年前にフリーランスになった後、周波数再編話があり、そのときに、このままアナログで良いのか、デジタルにするか、予算面ではどうか、などと考えましたが、なかなか決断できずにレンタルで済ませてたんです。仕事はありがたいことにご指名でいただくものもありますが、あぐらをかいているほど余裕でもありません(笑)。期待以上のものを出したいと思いますし、満足いただけるものをお届けしたい。だから機材投資も積極的にしたいと思っていますがなかなか難しいです。ただ、低価格帯のワイヤレスだと音質的にしっくりとくるものがありませんでした。2.4GHzもありますが、サイズが大きかったり、同録現場だと見通しが良くないとダメだったり、干渉したり、とよく耳にしますし。お手軽価格の800MHzのB帯ワイヤレスも値段相応の音質ですし。こうした中、Inter BEEのゼンハイザーブースで「1.9GHzデジタル」という他とはちょっと違う「AVX」というワイヤレスがあったことを思い出しました。Inter BEEのデモでは、ENGスタイルで直接ワイヤレス受信機をカメラに接続していたかと思います。
Q:2015年ですね。
A:そうです。拝見した当時の目的は、最近の撮影で、カメラに有線で音声を戻せないシチュエーションが多々あり、録音収録機から無線で飛ばしたいという狙いでした。デモをしていた方に「ミキサーアウトする使い方可能ですか」と相談したら「可能です」と聞きました。ただ、付属バッテリーの持ち時間が3、4時間なので、予備バッテリーがあったほうが良いとお勧めされました。バッテリー持ち時間で躊躇している人はいるようですが、予備バッテリーをつけたとしてもAVX自体の価格が安いのは大きな魅力でしたね。また、音がとてもクリアだったことも覚えていました。そこで、ゼンハイザーさんに連絡して、一度お借りして、カメラ送りとしてではなく、通常のワイヤレスマイクとして、本番で使わせてもらいました。
Q:どのような現場だったのでしょうか?
A:或るコマーシャルでした。渋谷の屋外ビジョンや企業ホームページ・YouTubeとかで流れたと思います。予算的には非常に安かったのですが、いつも大変お世話になっている監督から指名でいただいた仕事でしたので、お引き受けしまして。ワイヤレスをレンタルして使うのもちょっと費用的に躊躇するものがあったのと、デモをしたいという気持ちがあったので、ゼンハイザーさんに連絡したところ、快く貸してくださいまして。今だから正直に申しますと、僕の方はコストを抑える意図もあったのですが(笑)、それが、実際に使ってみて思っていた以上にすごく良かったんです。
Q:具体的にAVXの良さはどんなところでした。
A:何と言ってもコストパフォーマンスです。こんなことを言ってはダメかもしれませんが、この価格であの音質が録れるのはすごいですね。それに、小声から大声まで幅広くしっかり捉えますし。また、1.9GHzだと回折が弱いとお話を聞きましたが、スタジオ・ロケ等で使用していて、大きな問題には至っていません。また、送受信機で通信しあって、空いている周波数へ自動で逃げてくれるのも助かります。受信機の電源はファンタム電源と連動するので、機材の電源をON,OFFするのに反応して、受信機の電源も自動でON,OFFするのも魅力でしょうか。私のスタイルは、大きな仕事、例えば出演者が多数いる場合や予算のある仕事の時は、ブームマンの方と2人、場合によっては3人で収録に臨みます。その一方で、予算のあまり無い作品や、急に飛び込んできた作品には、ワンマンで対応しています。その際、AVXはとてもシンプルで機動的、そして作品に見合う価格で対応でき、必要とされている目的に応えられていると思っております。いっぱい売れて、現場の周波数がいっぱいになったら困りますが(笑)。
Q:ゼンハイザーのサウンドついてどのような印象をお持ちですか。
A:MKH 416にしても、MKEにしても、やはり高音のヌケが良いですよね。そして下もしっかりある。僕は、ザ・パワー・ステーション『Get it on』とかデビッド・ボウイの『Let’s Dance』ような80年代を代表するような音質が当時から好きで。今思うと、「引き締まった音」、「ヌケのいい音」だと言うことでしょうか。その音に近いので、とても好みの音質です。
Q2:AVXは「コンパクトさ」にこだわった商品になっていますが、その点についてはどのように感じましたか?
A:持ち運びやすくて良いですよ。3セット持っていますが、小型のカメラバッグに他の機材とともに入れています。今日持ってくればよかったですね(笑)。カメラバッグにそれぞれポケットをつくって、マイクはその中に小さなケースに入れて、出し入れしています。それに、先程も申しましたように、AVXの受信機は、とても小さいので、最近の撮影で、カメラに有線で音声を戻せないシチュエーションが多々あり、録音収録機から無線で飛ばしたいという時はもってこいです。撮影部にもこのコンパクトさは邪魔にならず、軽量でとても評判ですしね。ミキサーアウトからマイクゲインレベルで出し、送信機から送ってバッチリです。
Q2:他の今までのワイヤレスだと、専用にケースを持つ人もいますが、AVXはカバンに一緒に入れられるということも大きなメリットだと思います。
A:そのとおりです。それに、ロケ現場の車両移動の際、受信機はそのまま取り付けたままで移動できますし、さっきもお話したように、他の機材と一緒に、小型のカメラバッグに入れて、普段は運搬しています。ゼンハイザーさんの製品は頑丈ですしね。
Q2:バッテリーの運用はどのようにされていますか。
A:僕らが同録する時、半日以上は使います。AVXの送信機のバッテリーは余裕で持ちますが、受信機は実質3時間半ぐらいですかね。なので、僕はもう1つずつバッテリーを用意して、2つをセットにしています。時間がきてLEDが点滅しだしたら、カットの間に予備バッテリーに差し替えます。スマホのモバイルバッテリーをミキサーバッグに用意しているので、これを使って充電します。1時間ちょっとで充電できますから、交換したバッテリーが切れる3時間半後にはもう満タンになっています。これを繰り返す形で使います。
Q2:最後にもう1点。19mm秒のレイテンシーへの対応に関しても聞きたいのですが。
A:僕はサウンドデバイスの664を持っています。サウンドデバイスのアナログはすごく音がいいのですが、664ではプリディレイをかけらません。なので、AVXをガンマイクと組み合わせる際には、ガンマイクの音は664のダイレクトアウトからF8に差してプリディレイをかけるようにしています。最後にカメラへの送り用としてF8のアウトからサウンドデバイスにもう一度戻しています。MA時は、当然664で収録しているガンマイクの音声を使用しているので、AVXの音声トラックを19mm秒ずらしていますが。
Q:そうすると、レイテンシーの問題は、そこまで気にならないというか、苦ではないという感じなのですね。
A:そうですね。あと、モニターしているとリアルタイムで現場の音も入ってきますが、ミキサーを通した音がそれより少しディレイしていると、そのディレイが自分の聞きたい音なので識別しやすく、「あ、録れてる、録れてる」とわかります。その状況音と混ざった音を聞くのではなく、遅れている音の方が本来の音だという聞き方です。最近はこういうのもありだなと思っています。しかし、HD 25のヘッドフォンを完全に耳に被せてますと、外から回り込むリアルタイムの音は、まず聴こえませんので、マイクを通した音声しか聴こえませんから問題ありませんけどね(笑)。
Q:いろんなお話を伺えました。今日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
A:こちらこそ。今後ともよろしくお願いします。