Perfect sound studio blog

ジュディ・オングさんインタビュー

常に日本の歌謡界の第一線で活躍してきたジュディ・オングさん。その活動は歌だけでなく多岐に渡ります。この日はゼンハイザーショールームまでお越しいただき、インタビューをさせていただきました(インタビュー日:2015年5月)

Q 最近、ますますご活躍の様子を多くの方が感じています。 年末には歌手として歌番組やディナーショーなどを行い、女優として人気ドラマ「ドクターX」にも出演されていました。また木版画家としても国内外で個展を開催されるなど幅広い活躍が印象的です。最近の活動内容について教えていただけますか。

A(ジュディ・オングさん)
昨年からドラマには続けて声をかけていただいて、つい先日放送が終わったのが「銭の戦争」というドラマでした。「ドクターX」 もその前の「ルーズベルトゲーム」もこの頃ちょっと大企業の社長とか会長とか議員さんの役柄で、自分でもそんな歳になったのかしらと思っております。

もちろん仕事の合間を縫って木版画の制作もしてます。 先日は上海の花園飯店(ホテルオークラ)とその中にある三越が共に25周年ということで、お祝のメイン企画として個展をさせて頂きました。上海のガーデンホテルといいまして、昔のフランス様式がそのまま残る本当に素晴らしい建物でした。 歌のお仕事は、テレビですと「魅せられて」を歌うことが多いのですが、今年はビッグバンドやオーケストラとご一緒が続いていますね。私ジャズも歌うんですよ。小さい頃はジャズが子守唄だったんです。

Q すごいですね。 女優・作家、そして歌手と大変お忙しいように思われますが、どのように時間を分配してらっしゃるのでしょうか?

A(ジュディ・オングさん)
その年によりますね。今年は版画を一生懸命やろうという時には色濃く版画をして、他のことを薄めにしております。事務所の中でスタッフと企画を立てながらやっています。身体はひとつですので。

昨年からは、ドラマが続いていたので、秋の日展出展作品の制作は本当に大変でした。 その後もすぐに小さな作品の締切に追われ、お正月のお休みもありませんでしたね。 今は、ドラマが一段落したので、また大きな作品に向けて集中するところです。 それでも、歌の仕事は入るのでボイストレーニングは欠かせません。

Q 女優、歌手、木版画家。どの経歴がもっとも長いのでしょうか。

A(ジュディ・オングさん)
実は9歳の時に「劇団ひまわり」に入り、デビューは11歳でしたから、歴史としては俳優業の方が長いです。歌のデビューは16歳なので、でも「魅せられて」がリリースされてからは本当に歌の仕事が多くなりました。

若い方達は、私が歌手だと思ってらっしゃるので、最近ドラマに出ていてビックリされていると思います。でも金馬奨というアジアのアカデミーで主演女優賞を、アジア映画祭でも主演女優賞を頂きました。その後、「魅せられて」が出まして、突然歌手の仕事に方向転換となり、レコード大賞をいただきました。

Q 木版画家としての活動はいかがでしょうか?

A(ジュディ・オングさん)
版画は「魅せられて」の前、25歳の時からです。いつ何時もやはり情熱が消えないということが結果的に継続になります。人間ですから、体調を壊すこともあれば、忙しくてできないこともあります。ドラマが忙しくて歌ができない、歌が忙しい時は他ができません。 当時は歌番組の数がたくさんありましたので、年中全国を飛び回って、朝起きると自分が何処にいるのかわからなくなるときもあったほどです。

ドラマの収録中はなかなか版画に触れるということもできなかったです。でも、3年たっても、4年たっても、心のどこかでいつかやりたいと思っていれば、少しスケジュールが調整できればまた作品を作っていくことができますし、展覧会にも挑戦することができる。継続していけるのですね。展覧会で入選するとそれがまた活力になります。

みなさんの中には「三日坊主だから辞めてしまった」とおっしゃる方もいるのですけど、私はそんな言葉はないと思います。3日やって、翌日4、5日目に休んでも、6日目にまたやればいい。継続をするというのはやりたいという気持ちが消えないということと、その消えない気持ちを実践するということだと思います。

Q よく忙しくて何ができない、新しいことができない、続けられないといいますが、 それだけ何かを続ける為のモチベーション、感性を磨くために時間をどうやりくりされているのでしょうか?

A(ジュディ・オングさん)
時間は作るものです。忙しいからできないことはありません。 誰しもボーっとしたり、横になってテレビ見たりする時間は必ずあるんです。 いかに時間を摘んで、やらなくてはいけない作業のことを考えるかだと思います。


ショールームでウォールにサイン

人生一回しかないんですよ。生きるということの素晴らしさを知ると大事に時間を使うようになる。

昔、青春というものを若者に与えるのはあまりにももったいない、という言葉がありました。それはなぜかというと、若いと時間を無駄遣いしがち。時間は永遠にあると思っているから。実はそうじゃないんですよ。

つまずいて怪我をするとわかる。死にそうになったらわかる。私も2回ほど死にそうになったんですよ。過労で倒れたりすると、生きるってどういうことかな?って考えるんですね。有意義に生きたい。そして、生きてるという証が自分に欲しいな、と思うようになります。

私は「世の中に、自分が人の役に立てたなって思える人間になる」ということをしたいなって思っています。それが私の場合は、多少ですけどワールドビジョンジャパン親善大使や、日本介助犬協会のサポート大使などをさせていただいております。少しでも役に立つ人間になりたいな、というものが自分の中で芽生えるんです。

そうすると、その時に付いてくるものが「ありがとう」なんです。「ありがとう」って人から買えないですよ。何かをさせていただいたときに「ありがとう」って言われると今日も生きてて良かったって思える一日になる。 こういうことを自分の生きていく中に組み込みたい。そうすることで生きている意味ができる気がします。

(司会者)
ジュディさん、2008年のゼンハイザージャパン創立記念パーティーでお会いした時よりも、さらにイキイキと美しい印象を受けるのも、このあたりに秘訣がありそうですね。

(ジュディ・オングさん)
夢がある、好奇心がある、目指すものがある。そこに向かっているというのが楽しいんです。

私は前を見る現実派です。夢は必ず持ちます。できると思うから実現できるということになるんでしょうね。ダメだと諦めてしまったら、ダメになります

人に物事を頼むときに、「~~していただけませんよね?」って否定的に頼むと、相手も「してあげよう!」という気にはなりません。「是非お願いします!」と言ってみて下さい。海外での版画展も「まずドイツでやろう」から始まったのですが、「ドイツでやるなんて難しいわよね」と言わずに「必ずできる」と思っていたので本当に実現しました。 そしてその後はパリでも版画展を行いました。常に「YES」そして「できる」というところから何でも始まるんです。「できないですよね?」とは絶対に思わない。


2000年にフランスで版画展を開催した時

そして、何かをやる時に明るい声を持つことも大切です。マイナス思考の声をしていたらみんなマイナスになります。やっぱり明るい声がいい。

事務所でも「おはようございます」の声が小さかったら、「声が小さい!」と怒ります。(一同笑い)

声は大事です。表現なんです。

人間が歌う、子鳥がさえずる、オオカミが吠えるこれ、コミュニケーションじゃないですか声があるというのは表現ですよ。小さいと後ろ向きに聞こえますし、前に向いている人は伝えようという気持ちがあるから声が大きい。やっぱりリーダー格の人も声が大きいですよね。その声を伝えるのは、ゼンハイザーです。がんばってください。(一同笑い)

(司会者)
ありがとうございます。励みになります。


ワイヤレスヘッドフォンRS 160を試聴

Q さて、いよいよ歌の部分についてお伺いさせていただきます。常に素晴らしい歌を歌われている上で、何かこだわっていることはありますか。また、音に対してジュディさんのこだわりがあれば教えていただけますか。

A(ジュディ・オングさん)
歌うことに関してのこだわりは、ちゃんと声が聴こえるということですね。モニターのバランスをとるときに、バンドの音が声をサポートして聴こえるようなモニターで歌っています。埋もれちゃっているのは歌いにくい。

それから私はイヤフォンというよりは生の音を聴いて育ったので、モニターから聴こえてくる自分の音と後ろから来る生の音をミックスしてその中で自分の声がきちんと聴こえてくることを大事にしています。ガリガリしたのは得意じゃないので少し包まれるような、丸いような、そんなしっかりした音で聴きたい。

Q マイクロフォンに関してはいかがですか。自分が使いやすい、使いにくいと思って使ったことはありますか?これは私に合わないなという感覚で使ったことありますか?

A(ジュディ・オングさん)
それは、ありますね。

(社長)
マイクは一般的に人間が聴ける周波数帯は全部受け入れます。にもかかわらずマイクによって使いやすさが違うんです。

例えばゼンハイザーのマイクロフォン、他のメーカーのマイクロフォンいろいろあるんですけども、私はゼンハイザーじゃないと嫌だという人と他のあるメーカーのマイクロフォンじゃないと嫌だという人が必ずいるんです

(ジュディ・オングさん)
私もマイクを持ってステージに立って、どうして合わないかのな、このマイクはって思うことがあります。それは歌った瞬間にわかりますね。思った通りに出ていない。好きな音で聴けてない。と思ったときです。

(社長)
好きな音と忠実な音というのは別です。音には忠実に再生できるという技術と音を自分の好みの音に変えて再生できるという技術が2種類あります。ゼンハイザーのマイクの特徴は忠実に音を再現します。無理に低音や高音を強調して出したりしているメーカーもあるんです。同じ声で歌っても、低音が大きめに再現されるマイクもあるしそうでないマイクもあります。ゼンハイザーはまったくその通りの音を再現させるのがポリシーであり特徴なんです。

メーカーによっては低音を強調して大きく出したりするので、歌手によってはゼンハイザーを好まないことがあります。なぜかというと忠実に出すぎて例えば低音がもっと強く出てほしい、とか好みの音質があるんですね。某メーカーのマイクは低音のある周波数帯が強く出るから好き、という人もいます。それは低音が強く表現されるようにあらかじめしているのですね。


(ジュディ・オングさん)
エンジニアによりますよね。

(社長)
良いとこついてきますね!マイク自身は特性をフラットにするべきなんです。あくまでも音はミキサーで好きな音質に変えられるんです。フィルター、イコライザー等で調整して音を操作するんです。ところがマイク自身で音を作ってしまうとダメなんです。 マイクはあくまでも忠実に音を再現させることが大事。

確実に低音も高音もえこひいきなしに出すというのがゼンハイザーの特徴だから、本当のエンジニアの人はゼンハイザーに惚れ込んで戴けます。歌手の人は必ずしも惚れ込むとは限らない。でも、ミキサーのエンジニアというのはそのためにいるんです。触れば音はどうにでもなるんです。そこでなんとでもなるのに、低音を強調するとかわざわざマイクで音を仕込むことはないんです。

Q マイクの話が白熱してきましたが、次に実際にヘッドフォンを聴いて頂いて、その感想をお伺いしたいと思います。

A(ジュディ・オングさん)
音に関して私は思うのですが、ビロードのような(滑らかな)音が聴きたいんですね。デジタルではなく、ビロードのような柔らかい音を作れるといいですね。それにはフリークエンシー(周波数)をすごい幅広く広げないといけない。人間の体というのは本当に果てしなくすごい可能性を持っているというのを、もういちど再認識した方がいいかな、と思います。ここからここですと決めなくていい。体で聴くんです。耳は一部分です。そういう感じで聴きたいな、という気持ちがありますね。

その方が幸せになると思います。子供たちも生の演奏なんてほとんど触れることができないんですよ。それに近いものをいまゼロ(0)・イチ(1)であっても、どうやって信号をウェーブにしていくか、それに近く持っていけるのか、ということを若い人たちがもっと若い人たちの為に、そして明日のために考えていってほしいです。


フラッグシップヘッドフォンHD 800を試聴

Qゼンハイザーのヘッドフォンを試聴してみた感想はいかがですか?

A(ジュディ・オングさん)
音の力が伝わりますね。

イヤフォンだと、耳の穴から聴こえる感じです。もちろん、これも良いのですが、このヘッドフォン(HD 800)は別格。耳を包む感じに聴こえますね。ものすごく良い音。音のパワーが違います。演奏している楽器がある位置がわかります。

他にも良いものが出ていますね(HD 650, MOMENTUM,RS 160を聞いて)。ワイヤレスのもの(RS 160)も良いですね。移動中、車移動の際台本読みなどで集中したい時に、このヘッドフォンは良いですね。使ってみたいですね。

男性よりも女性の方が骨が細いので、ヘッドフォンは重みがあると頭に負荷がかかりますね。耳のいい位置にセットして聴きたいです。

(司会)
今日はいろいろなお話をいただき、ありがとうございました。これからもますますのご活躍を楽しみにしております。また、今年はゼンハイザー設立70年を迎えた記念すべき年ですので、秋に記念パーティーなどを開催する予定でおります。その時に、またお越し頂ければ嬉しいです。今日は本当にありがとうございました。

ジュディ・オング プロフィール
歌手・女優・木版画家
台湾生まれ。11歳の時、日米合作映画「大津波」でデビュー。 歌手デビューは16歳。1979年「魅せられて」の大ヒットにより日本レコード大賞を初め、数々の賞を受賞。木版画家としては2005年日展特選を受賞。 TBS「ルーズヴェルトゲーム」、テレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」、2015年 フジテレビ「銭の戦争」と続けて出演。女優としては完全復活、好評を得ている。 現在、ワールドビジョン親善大使、介助犬サポート大使、ロータリーのポリオ撲滅大使でもある。